テントやタープなど防水製品には寿命がある

テントやタープなどは化繊だから一生もの、と思っていたけれど間違いでした。防水製品には寿命があります。

加水分解で粉を吹いていると思われるグランドシート

シームシーリングが劣化して剥がれかけている


加水分解とは

簡単に言えば、合成樹脂のたぐいが湿気によって劣化することを加水分解というようです。

山の世界では数年履いた登山靴のソールがもろくなって剥がれることが知られていて、たまに登山道にソールが落ちているのを見ることがあります。

そして、なんとテントやタープにも加水分解の問題があるということをつい最近知りました。

テントやタープの場合には、裏面にポリウレタンによる防水コーティングがしてあり、それが加水分解することによりベタベタになってしまうということです。

防水コーティングが分解してしまうので、防水性も損なわれてしまうようです。

テントとタープの劣化について

歴代テント機材の劣化具合は次のとおりです。

モンベル ステラリッジ3

2004年に購入した最古のテントで、山岳用の三人テントです。以前使った際にフライの内側同士が張り付いていてペリペリと剥がして使い、ポールにひっかかって張りにくかったのを覚えています。

当時も雨がフライに染み込むので撥水スプレーを使っていました。今にして思えば、このとき既に加水分解が顕在化していたことになります。

今回、次のキャンプのために点検してみたところ、フライ同士が完全に張り付いていて、剥がすとベリベリッ、バリバリッと音がして、手もベタベタになり、すぐにまたフライ同士が張り付き使用不可能でした。そのままゴミ箱(粗大ごみ)行きとなりました。

何故かインナーテントの底部分はそれほどベタツキもないのでまだ取ってあります。

ちなみにステラリッジの下に敷く専用のグランドシートも加水分解してペタペタするようになりました。

スノーピーク ランドブリーズ4 LX

2006年のゴールデンウィークに投入した、前室が大きいテントです。しばらく使った後、弟にあげたけれど、全然使ってなかったので先週回収してきたところ、フライはペタペタしていて若干手に付きます。インナーテントのボトムもペタペタするもののフライに比べるとまだマシです。

スノーピーク HDタープ”シールド”・ヘキサ(L)Proセット

2006年10月に購入したと思われるヘキサタープです。
なんとこれは問題ありません。今でも現役です。

追記: 穴が開いていました。後述。

スノーピーク リビングシェル

2008年のゴールデンウィークに投入したのがスクリーンタープ リビングシェル。
完全にベトベトで、手もベタベタ。ランドブリーズよりも重症で処分しました。

スノーピーク アメニティドームS

2010年11月購入の小型のドームテント。
今のところ問題なし。

2020/10/13 追記
先週末に一年ちょっとぶりに使用したところ、フライの内側がペタペタして、いくつかのシームシーリングテープが随分はがれていました。テープを補修すればまだしばらく使えそうですが時間の問題だと思えます。

傾向

リビングシェルがベトベトなのに、それより前に買ったヘキサはまだ大丈夫です。

うちはこの二三年、納戸の前でカブトムシ(冬も幼虫)を飼っていて水分保持のため霧吹きを使っていたので湿度高めでした。それが原因かと思ったけれど、弟のマンションで保管してあったランドブリーズもベタベタです。

リビングシェルとランドブリーズに共通するのは両方とも収納時サイズが大きいということ。一旦内側にこもった湿気が抜けないから加水分解が早まるとか?

それだと小さいステラリッジはどうしてという話だけれど、こちらはやはり古いから? でも、ヘキサと2年くらいしか違わないし…

インナーの方が劣化が少ないのはインナーを内側に巻いていたせいかもしれません。その分湿気にさらされないせいかと。

あとは製品に使われているポリウレタンの質(分解速度や親水度等)がそもそも違うのかも。

対策

キャンプが終わったら当然ですがよく乾かすことです。私は現地でパリッと乾かすか、乾かない場合には家の浴室で乾かし、さらにリビングで完全に乾かしてから収納していました。


加水分解のためというよりはカビ対策でした。これまで浴室の目地に少しカビが生えたことはあるけれど、それ以外のものや壁等にカビが生えたことはないので、湿気が多い環境ということはないと思います。

以前から、買いだめした登山靴はビニール袋に乾燥剤と一緒に入れて保管しています。加水分解対策です。そのかいあってかこれまでソールが剥がれたということはありません。

ネットで見ると、密閉できるプラスチックケースにキャンプ機材と乾燥剤を一緒に入れている人もいます。場所をとるのが難点だけれど、高価な機材の場合にはこれも一つかもしれません。

私はテントやタープには寿命があると割り切ってもう高価なものは買わないことにしました。(私は年何回というペースなので)

あとはキャンプ機材を収納してある納戸は水気のあるものを近くに置かず、詰め込まずに、梅雨の時期はドアを開けて風通しを良くして乾燥させることを心がける位でしょうか。

加水分解してしまったものを洗浄と撥水剤を使って再生させている方もいます。
https://campdaisuki.blog.fc2.com/blog-entry-3534.html

手についたベトベトは水洗いでもベタベタしなくなる程度には落ちます。手がキュッキュッとするのでビオレで洗うと完全に落ちます。ということはテントやタープも中性洗剤で洗えば落ちるのかもしれません。

落ちただけだと防水性が失われているので、撥水剤、防水剤を使って耐水性を上げるということになるようです。撥水は水をはじくだけ、防水は水を通さない代わりに通気性も損なわれる、という違いです。

ステラリッジの経験では撥水スプレーでもフライに染み込まなくなるので効果がありました。縫い目には念入りに吹きました。

問題はインナーテントのボトムで、こちらは天気やサイトの状態によってはどっぷりと水に浸かる事もあるので防水剤とシームシーリングが必要ではないかと思います。

ポリウレタンを使わない製品

ネットを検索すると、そもそもポリウレタンを使っていない製品もあります。

コットン系

コットンもしくはコットンと化繊の混紡を使いポリウレタンコーティングをしないもの。

コットン系は物量が半端なさそうです。次の動画を見ると、地面においてある機材の量に圧倒されます。
How to pitch Nordisk Asgard (Youtube)

アスガルド12.6の重量は21kgです。これで濡れたら一体どんな重さになるのか。

化繊のテントでさえ撤収時に乾かせるかどうかは時間と日差しによります。濡れたコットンテントは一体どれだけかかるのか疑問です。

雨の日の土サイトでの撤収も大変そうです。地面に置けばドロで汚れます。化繊の場合、テーブルの上を使って畳むという手もありますが、あの物量では…

シリコンコーティング

次のサイトではヒルバーグのテントはポリウレタンを使っていないと書かれています。
https://camphack.nap-camp.com/3618

しかし、そもそもの価格がいずれも十数万円と凄まじいです。
http://www.hilleberg.jp/product/tent/4person/#tag=.showall

また、開放できるメッシュ部分がなさそうで、フライが地面についているため開放感や通風性は乏しく、オートキャンプでリラックスするのには不向きでしょう。

4人用と書いてありますが、幅は210cm程度のようで山岳テントのスペックです。オートキャンプでは一人最低60センチは欲しいので三人しか寝られないと思ったほうが良いでしょう。

また、フロアー処理のところにはしっかりポリウレタン三層コートと書かれています。

加水分解機材の再生について

これまでにも、ネットで加水分解したテントやタープを修復している人を見てきました。今回見つけた次のページはとても参考になりました。有機溶剤系をテントの内側に塗るなというのはなるほどと思いました。

本気でテントをメンテする。洗浄・撥水・そして加水分解の修理と対策

ただ、大変そうなので自分でこれをやってみようという気にはなれないです。これを趣味としてやるのであれば、それもまた一つですが。

洗濯してデイキャンプで使う(雨では使わない)という方はこれも一つだと思います。

シューズやテント類以外の加水分解

アウトドア用品

友人に、テントとタープが加水分解したことを伝えたところ、その友人はバックパックもベトベトになって捨てたそうです。

それはグレゴリーの製品で、確かに防水性能がありました。どうやらポリウレタンだったようです。

レインウェアも例外ではなさそうです。ゴアテックス自体は問題なさそうですが、他に使っている部品がポリウレタンの場合があるようです。
http://mukokuseki-ch.com/2017/10/23/post-2516/

防水製品には寿命があると思っていたほうが良さそうです。長く使うつもりのものは防水性能がないものを選ぶのも一つかもしれません。

先日購入したノースフェイスのダッフルバッグも防水性能があったので大丈夫だろうかと思い、調べてみたところ、1000D TPEファブリックラミネート(ポリエステル100%)、840Dナイロン、としか書いてありません。

一見ポリウレタンは使っていないように見えます。でも、ラミネートというのが引っかかります。ポリエステルと何を貼り合わせているのでしょうか?

2020/9/25追記
モンベルのレインウェア、ストームクルーザーを洗濯したところシームシーリングテープ(seam sealing tape)がはがれてしまいました。十数年、もしかしたら二十年近く、山はもちろん、旅行やキャンプで使用しています。


電気製品

(2021/8/7追記 電気製品の場合には加水分解ではなくブリーディング現象のようです)

アウトドア製品ではありませんが、先日モニターの色を図る測色機を久々に持ったらゴムっぽい触感の部分がべとべとになっていました… Amazonのレビューを見ても同様にべたべたになったと書いている人がいます。

HPのミニタワーPC p6220jpというモデルの足がゴムみたいな素材だったのですが、気が付いたらベトベトになって原形をとどめないくらいに溶けていました。

どこかでアルコールで落ちると書いている人がいたので、いずれも台所のアルコールを使ってウェットティッシュで拭いてみたところ確かに問題ないレベルに落ちました。

他にはアンテナケーブル、プレステのコントローラーのスティック、さらにはテレビの電源ケーブルまで加水分解しています。

こう書くとどれだけ湿ったところに住んでいるんだと思われるかもしれませんが、部屋には24時間換気機能がついていて、トイレと風呂の換気扇は常に稼働しています。部屋の陽当たりも南と東と西にそれぞれ窓がある2階で良好です。

ポリウレタンを使った製品は、加水分解から逃れるのが困難なようです。

スノーピークのヘキサタープに無数の穴

2020/7/6、無印良品カンパーニャ嬬恋に行ったところ、夜にタープの複数個所から雨漏りしているのに気が付きました。雨漏りと言っても水が水滴になっているだけで、ポタポタ垂れるという程ではありませんでした。ベタベタしてなかったのにやっぱり加水分解していたのか? と思い、その晩は寝ました。

翌朝雨漏りしていたところを下から見ていたところ、ごく小さい明るい部分があります。えっ!? これもしかして穴? よく見ると、あちらこちら、特にタープの折り目に沿ってアリの行列のように無数の穴が開いています。そしてそこから白糸の滝のように水が漏れてタープの下側を伝っています…

傷むからタープやテントを同じところで折りたたんではいけないというのは知識としては知っていました。しかし、そう簡単に劣化するわけあるまいと思って、今までは簡単だから折り目のところで畳んでいました。本当にダメだったんですね…

ヘキサタープは古いけれど、使用回数自体は10回くらいではないかと思います。

雨漏りはシームシーラーで直せるかもしれないけれど、穴が開いているのは強度不足の可能性があります。強風で折り目から裂けたなんて言ったら目も当てられません。とりあえずスノーピークに修理の問い合わせをしてみました。

2020/8/1現在、スノーピークから何の連絡もないのだけれど、問い合わせが届いていないのでしょうか、それとも手順を間違えているんでしょうか。

ブリーディング現象

2021/8/7追記

スタパ齋藤のApple野郎を読んでいたところ、『合成樹脂の表面がベタベタしてくる現象の多くは「ブリーディング(bleeding)」や「ブリードアウト(bleedout)」と呼ばれる現象らしい』という説明が。

ブリーディングは合成樹脂に含まれる、可塑剤、着色剤、油などがしみだしてくる現象だそうです。なるほど!!

Apple Pencilまでもがベタベタしてきた話 スタパ齋藤のApple野郎 より

何でもかんでもべたつきは加水分解だと思っていましたが、そうではありませんでした。

大まかに言って合成樹脂そのものがもろくなるなどするのは加水分解で、本体はしっかりしているけれどべた付いてくるのがブリーディングなのかもしれません。

勉強になりました。

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